MEASUREMENT TECHNOLOGIES
測定技術
当社が取り扱う各測定方式の原理と特長、選定時の注意点をご紹介します。
FID — Flame Ionisation Detection
水素炎イオン化検出法
水素炎の中に試料ガスを導入すると、炭化水素分子から水素原子が引き抜かれ、炭素ラジカルとイオンが生成します。このとき流れる微小なイオン電流は炭化水素中の炭素原子数にほぼ比例するため、電流を計測することで全炭化水素(THC)濃度を求めることができます。
- 測定対象:THC(全炭化水素)、CH4、NMHC、VOC
- 強み:高感度(微量ppm〜%オーダー)、広いダイナミックレンジ、速い応答
- 注意点:燃料ガス(H2He等)の供給が必要。高沸点成分を含む場合は加熱型の採用を推奨
- 代表用途:エンジン排ガス、固定発生源のVOC・NMHC監視、LEL監視
CLD — Chemiluminescence Detection
化学発光法
一酸化窒素(NO)とオゾン(O3)が反応すると光子が放出されます(化学発光)。反応で生じる光の量はNO分子数に比例するため、光量を計測することでNO濃度を求められます。NO2はコンバーターでNOに変換してから測定し、NOxとして算出します。
- 測定対象:NO、NO2、NOx(NH3コンバーター併用で全窒素化合物)
- 強み:NOx測定の標準手法、微量ppmの高感度測定、速い応答
- 注意点:オゾン発生器と排オゾン処理が必要。CO2やH2Oによるクエンチングの考慮が重要
- 代表用途:エンジン排ガスのNOx測定、脱硝管理、アンモニアスリップ、燃焼研究
NDIR — Non-Dispersive Infrared
非分散形赤外線方式
多くのガス分子は、それぞれ固有の波長の赤外線を吸収します。試料セルに赤外光を通し、対象ガス特有の波長における吸収量を測定することで濃度を求めるのがNDIR方式です。ガス測定において最も広く使われている分析手法です。
- 測定対象:CO、CO2、SO2、N2O、CH4、HClなどの赤外活性ガス
- 強み:多成分同時測定(最大5成分)、低ドリフト、長期安定性
- 注意点:N2・O2・H2などの等核二原子分子は測定不可。水分の干渉対策が重要
- 代表用途:燃焼排ガスのCO・CO2測定、CEMS、プロセスガス監視
Paramagnetic
磁気式(パラマグネチック)酸素測定
酸素は他の一般的なガスに比べて際立って強い常磁性を持ちます。磁気式酸素計では、窒素を封入したダンベル型回転子を磁界の中に置き、酸素分子が磁界に引き込まれる際の力を光学系で検出して酸素濃度を測定します。
- 測定対象:O2(パーセント濃度)
- 強み:高精度(±0.1% O2直線性)・高再現性、長寿命
- 注意点:NOなど磁化率を持つ共存ガスの影響、振動・傾きへの配慮が必要
- 代表用途:燃焼排ガスのO2測定、不活性雰囲気管理、プロセス酸素監視
TDLS — Tunable Diode Laser Spectroscopy
波長可変半導体レーザー分光法
波長を精密に制御できる半導体レーザー光を試料ガスに照射し、対象ガス分子による赤外吸収で減衰した光量を検出する方式です。対象ガスの吸収線だけを狙って波長を掃引するため、極めて高い選択性が得られます。
- 測定対象:NH3(アンモニア)ほか
- 強み:優れたガス選択性、非接触・高速応答(T90約3秒)、低い検出下限(0.2ppm)
- 注意点:水分濃度など測定条件に応じたモード設定が必要
- 代表用途:アンモニアスリップ監視、AdBlue/尿素噴射制御、脱硝プロセス
FTIR — Fourier Transform Infrared
フーリエ変換赤外分光法
赤外光源からの光を干渉計で干渉光に変換し、測定セルで試料ガスを透過させた後に検出します。干渉信号をフーリエ変換して吸収スペクトルを求め、ケモメトリックス解析により多成分の濃度を同時に算出します。
- 測定対象:CO・CO2・CH4・NH3・HCl・HF・SO2・NOxほか多数
- 強み:多成分同時測定、ppbオーダーからの広い測定範囲
- 注意点:等核二原子分子(N2・O2・H2)は測定不可。水分・CO2の吸収帯との重なりに注意
- 代表用途:エンジン排ガスの多成分分析、燃料電池原料ガス分析、プロセス監視
UV — Ultraviolet Absorption Spectroscopy
紫外線吸収分析
芳香族化合物や塩素など多くの物質は、紫外域の光を選択的に吸収します。ランベルト・ベールの法則に基づき、紫外光が試料を透過する際の光量減衰から目的成分の濃度を求めます。キセノンランプの光を光ファイバーでフローセルに導き、透過光をビームスプリッターで測定用・参照用の検出器に分配。参照光との比較により光源や検出器の経時変化を自動補償し、長期に安定した連続測定を実現します。
- 測定対象:水中微量塩素、芳香族(フェノール等)、次亜塩素酸ナトリウム、色度など
- 強み:可動部なしの高信頼構造、秒オーダーの速い応答、参照光補償による長期安定性
- 注意点:測定対象に応じた波長フィルターの選定が重要。気泡・濁りは測定誤差の原因
- 代表用途:石油化学プロセスの品質管理、排水・純水中の微量成分監視、アルカリ液管理
NIR — Near-Infrared Absorption Spectroscopy
近赤外吸収分析
水分子は近赤外域に強い吸収帯を持ちます。ランベルト・ベールの法則に基づき、近赤外光が液体試料を透過する際の選択吸収による光量減衰から、溶剤中の水分などの濃度を連続測定します。ハロゲンランプの光を光ファイバーでフローセルへ導き、温度制御されたInGaAs半導体検出器で受光。測定用・参照用に分光して経時変化を自動補償します。
- 測定対象:溶剤中の水分(エチレングリコール、アセトン、エタノール、酢酸など)
- 強み:1秒未満の高速応答、可動部なしの高信頼構造、参照光補償による長期安定性
- 注意点:マトリクス(溶媒)ごとに波長フィルターの最適化が必要。気泡・浮遊物は測定誤差の原因
- 代表用途:化学プロセスの水分管理(反応釜出口・乾燥塔入口など)、溶剤品質管理、研究開発
Chilled Mirror — 冷鏡式露点測定
冷鏡法(チルドミラー法)
露点とは、気体を冷却したときに水蒸気が凝結を始める温度のことです。冷鏡法では、ペルチェ素子で金属鏡面を冷却しながら、鏡面に光を当てて反射光量を監視します。鏡面温度が露点に達すると結露が生じて反射光が変化し、この状態を保つように鏡面温度を制御。そのときの鏡面温度を高精度温度センサーで読み取ることで、露点の物理定義に基づいた直接測定を実現します。静電容量式などの間接測定と異なり原理的なドリフトが少なく、校正基準器としても使用される信頼性の高い方式です。
- 測定対象:露点・霜点温度、相対湿度、微量水分(ppm)、絶対湿度
- 強み:物理定義に基づく直接測定、高精度(±0.15℃クラス)・優れた長期安定性
- 注意点:鏡面の汚れ対策(自動クリーニング・保守)が重要。氷点下では露点と霜点の判別が必要
- 代表用途:環境試験槽の湿度監視、計量校正、研究開発、高精度湿度モニタリング
Acoustic Resonance
超音波式ガス純度測定
ガス中を伝わる音の速度は、そのガスの分子量・比熱・温度によって決まります。超音波共鳴セルで音速を精密に測定し、ガス純度や二成分混合ガスの混合比を高精度に算出します。消耗品のない物理測定方式です。
- 測定対象:H2・O2・N2・CO2などの純度、二成分混合ガスの混合比
- 強み:メンテナンスフリー、現場校正不要、±0.1%の高精度
- 注意点:三成分以上の混合ガスでは組成の仮定が必要
- 代表用途:水素純度分析、発電機水素冷却監視、窒素純度分析
Gas Sampling & Conditioning
ガスサンプリング・前処理
どれほど高性能な分析計でも、試料ガスが適切に採取・搬送・前処理されていなければ正確な測定はできません。採取プローブ、加熱サンプルライン、除湿・除塵ユニットを含むサンプリング系の設計は、分析システム全体の信頼性を左右します。
- 主な構成要素:採取プローブ、加熱サンプルライン、フィルター、除湿器、ポンプ、流量計
- 設計のポイント:凝縮防止、吸着ロスの最小化、応答遅れの抑制
- 防爆エリアでの採取、前処理付きシステム構成などはお問い合わせください